2009年4月11日土曜日

「空気」の研究

山本 七平 著/文芸春秋
夏休みの自由研究に、このタイトルで模造紙1枚にまとめた子には、図書券1万円!内容は太平洋戦争勃発から終結まで 日本を「動かした」ものについて。
日本に特有と言われるいわゆる「その場の空気」。権力者をも不可逆的な暴挙へと煽動する、 権威そのものでもなく固有名称も持たない何か。現代でもその空気感は存在していると感じる。ただ、新しい価値観との邂逅、小説より奇なる事態が起きる度に、そういう漠然とした空気感の輪郭が徐々に明らかにされつつある、というのが 現代の面白いところであり価値だと思う。茂木健一郎のクオリアのように、それを 対象として扱える時代だと思う。

キャッチャー・イン・ザ・ライ

J.D.サリンジャー 著, 村上 春樹 訳/白水社
訳者としての村上春樹は好きだ。向こうの感性へのより良い梯子を差し出してくれる。といっても、思春期の感性には、分かりすぎるほど分かってしまうトゲみたいなものが突き出ていて、客観的に他人事で読めないというのが実のところ。昔、こういう子が他のクラスにいた。 鋭く、繊細で、面白い。言葉の端々に「おかしみ」があふれて出していてまさにその言動に皆が群れるような。その繊細さゆえに少し悪そうにしているのだと、根拠もなく感じ取れた。きっと、喜ぶ周囲の反応に、全面の呼応をするのが彼の本姓にふさわしいのだ。ホールデンが無条件に愛する妹への言葉もまた 無防備なほどにまっすぐだ。 エピソードを追体験したような 読書だった。

学問のすゝめ―人は、学び続けなければならない

福沢 諭吉 著, 檜谷 昭彦 訳/三笠書房
新訳でやはり読みやすい。国の主人たる国民は、無学を恥とし、社会の繁栄に貢献しなければならない。官のほうが禄の割がいいからと官になるのは 国費の乱用である。また民も官に対して卑屈な態度をとる必要はなく、そうなるべきではない。個人の独立とは経済的側面だけでは十分でない。 ・・・などなど。
これらはすべて開国間もない時代の いわば未開なほとんどの国民の現状を顧みて奮起を促した言葉たち。他にも、法には従え 税金は払え 恥ずかしくも、今の時代に同じ事を言われて当然の人々もいる(年金も含めて)が、そのレベルは明治以前としかいえない。(そういう低いレベルのことを指摘するための書ではない、少なくとも現代においては)独立の気概、自分自身に対する責任とは、等々、今の日本でも課題といえることを 明確に述べている。やっぱり良書だ。

差がつく読書

樋口 裕一 著/角川書店
楽読と実読の区別を勧めている。実読は多読を経て精読へ。読書の方法について分類してその用途を書いています。参考になるものもあります。でも精読に関しては 文学に関することしか書いていない。それが専門だったから仕方ないが、分野によって違う読書法を一概に語るのは 危ういと思う。読み終わったら発信する、これは賛成です。あとは、著者が言うよりも昔から言われていることですが、「読書は他の人の人生を生きる分、読者を豊かにする」これが読書における至言だと思いました。

方法序説

デカルト, Ren´e Descartes, 谷川 多佳子 著/岩波書店
真理は単純であるべき。そう思う。それを求める上での姿勢が、ここでは興味深い。真理を追究するその途上での姿勢(4つの規則)や、自身に定めた4つの格率は、人間がものを考えるということの広い意味での手引きといえると思う。 考え方の整理ととともに、”当座の”指南となる「モラル」というものの存在も不可欠だと先人も考えていたことに、普遍性を思った。 日本人なら、武士道だろうか。

教育欲を取り戻せ!

斎藤 孝 著/日本放送出版協会
著者お得意の新しい言葉「教育欲」ですが、これはあると言っていいと思う。でもその「欲」という言葉で表現してしまったためか、教育に対する意思を比較的”刹那的な”ものとしてしか説明していないと感じる。結果、教育の効果についてもレスポンスの早いものにしか焦点を当てていないな、という印象です。読み始める前に期待した長期的な観点に主眼はなく、どちらかというと教育における振った振られたの短期的なやり取り(駆け引き?)を以って読者の目を引こうとしている、いわばトレンディドラマ的な 売り方が少しいただけませんでした。

かいじゅうたちのいるところ

モーリス・センダック, じんぐう てるお, 神宮 輝夫, Maurice Sendak 著/冨山房
この表紙を見ただけで、20数年前の感覚がよみがえり、つい買ってしまいました。朗読までしてしまいました。
表面は明るく、でも牙をひそめた怖さがのぞく「鱗」のようなタッチがたまらない。

グラフィック 認知心理学

森 敏昭, 井上 毅, 松井 孝雄 著/サイエンス社

認知心理学の窓口を広範に紹介し、興味の端緒につかせてくれるとともに、基本的な知識も得られる。「分かる」ということがどういうことなのかを この本を通して顧みると、いままでいかに自分が あいまいな「分かる」という状態に基づいて すごしているか、が分かる。そういう気づきを経て初めて、物事をより正しく捉えることができるのだと、本当に実感できる。いろいろな実験ばなしも盛り込まれていて、そのどれもが示唆に富んでいて興味深いです。

とらっく とらっく とらっく

渡辺 茂男, 山本 忠敬 著/福音館書店
とらっく。スタートとなるある場所から、山道をたどり、夜の中を、とらっくが走っていく。 ゴールは、別の場所へのスタート。
40年前!に出版されて、 20数年前に生まれた僕が出会い、これからも見せたい、そういう存在です。動きたい、と思う動力は、この本の絵が 原盤になっている。
暗い夜道を進むヘッドライトが、これ以上ない興奮をくれて、焼きついています。

眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く

アンドリュー・パーカー, 渡辺 政隆, 今西 康子 著/草思社

あの大進化が「なぜ」起こったか、について、周到にそろえた証拠を連綿と並べた上で、最後に自説を示している。まさに、もやもやとした状況が最後に「像を結ぶ」ようで面白い!全編にわたって、身近な今昔の証拠からそれの意味するところにしたがって時を遡り、状況証拠をそろえていく、という順序が 守られている。ただし中には、ある物証に対して、著者のストーリーに都合のよい 側面だけを用いて論拠に当てているところも2,3箇所あった。また、状況証拠という性質上免れないのかもしれないが、この説の 有力な論拠自身が自己矛盾あるいは反証となりうる、という側面には 触れていないところが、まだまだ検証の余地のあるところだと思う。 特に回折格子の捕食-被食関係における効果について。こういうまとまった科学読み物は、 著者がストーリーの主導権を(当然)握っているので、敢えて反証や 矛盾に敏感になって読んでみましたが、それでも論理における 致命的な欠陥はないと思える、本当に面白い説だと思います。 著者も窮した、「じゃあ眼はなぜ進化したのか」という問いは、「謎が謎を呼ぶ」という科学の醍醐味なのかもしれない。終盤で明らかにされる説を読むと、いくつかの関連する事例が頭をよぎります。それは、「人工衛星の軍事における意味」とか、宗教的な解釈ではないですが、「知恵の実がアダムとイヴに与えた影響」です。あと、個人的には「色彩は脳内以外の外界には存在しない」というのが、改めて興味深かった。これは、まったく意外なところで、ソーシャルワーカーにも役立つのではないか、と思える。

図解・創造的仕事の技術

忰田 進一 著/ソフトバンクパブリッシング
分かりやすく効果的に伝えるための基礎が書かれている。内容はごくごく当たり前のことだけど、これを実践してる例は 普段見る図の中では少ないと思う。普段から説明には必ず図を使ったり、図が思い浮かぶような 言葉を選んでいると心がけている人には、こうして具体的な方法として示されることは興味深い。
ただし、「図解」云々以前に、文章の書き方に統制がなく、 話の展開が分かりづらい。たとえば、何の説明もなく勝手に割り振った多種の記号を、段落記号に使っているようだが、最初は何の意味やらさっぱり分からない。また話の展開についても、章ごとにはストーリーがあるが、その中身は羅列でしかない。そして重大なオチとして、「転載された具体例が、言っているほど分かりやすくない」。
文章の書き方も含めて、6割が反面教師?という本だけど、我慢して内容だけつかめば 役に立つ本。

4次元以上の空間が見える

小笠 英志 著/ベレ出版
進め方がとても丁寧で、ごく自然にn次元への拡張を 感じられました。3次元+1次元の説明のようなことは、実はきっと誰しも普段の生活で工夫しながらやっていることだと思います。
3次元曲面を4次元方向へ"のばす"時の 頭の中の独特の感覚。頭のストレッチになります。

アイデアのつくり方

ジェームス W.ヤング 著, 今井 茂雄 訳/ティビーエス・ブリタニカ

「アイデア」という、捉えどころがなくて 意のままに操れそうにないと思われるこの事柄について、明快に順序だててその作り方を述べている。「考える」という行為自体を整理したい人に お勧めです。

7つの習慣―成功には原則があった!

スティーブン・R. コヴィー, ジェームス・スキナー 著, 川西 茂 訳/キング・ベアー出版

納得し、実践して価値のわかる本。ここに書かれていることが習慣化できれば、本当に精神から充実することができると思う。1つ目から習慣化していくことで、着実に足元を固めながら前進を感じられる。

読むには長い時間じっくり咀嚼するのが必要です。

深海生物ファイル―あなたの知らない暗黒世界の住人たち

北村 雄一 著/ネコ・パブリッシング
深海魚、本当に不思議なものだ。小学生の頃、図鑑でリアルなスケッチで見た深海魚に、見入ってしまった。言うなれば、遠い国にいきなり憧れの人が できた感じ。この本は探査船で撮った写真入りなので、本物です。
すごい。なにこれ?笑うしかない。