日本の未来をつくる―地方分権のグランドデザイン
NPO法人日本の未来をつくる会 編/文藝春秋
日本のグランドデザイン、いわゆる道州制に関して、様々な議論を提示している本。
この本は、ある建築家が中心となって、他のさまざまな分野の識者たちがそれぞれの見地から国のあるべき姿を展望している。
巻頭から前半しばらくにわたっては、これまでの日本の発展の経緯と、その要所、そして現在へとつながる経路の中で、どこでおかしくなってどんな問題が生じているのかを俯瞰的に整理している。
こういう整理はとても解りやすい。例えば、現在の問題構造を端的に表す、
・「国(の出先機関)と県の2重行政状態」や、
・「地方は都市(中央)に人的資源を供給し、都市(中央)はその見返りに地方に交付税等の財政的補填を施してきた」
など。前者は、今話題の直轄負担金問題につながり、まさに日の目を見ている話でもある。また県(県庁)の存在意義について 取りざたされている実情にも言及するものである。後者は、まさに現在の構造そのもの。
ただ、提唱者たる建築家の論説部では、建築上のある概念のみを重用して、それが普遍的に国家論に応用できることを唱えているが、なぜその概念を適用するのかについて必然性がない。類似性からそうしているというのであれば、建築分野に限らずとも他によいアナロジーはいくらでもある。加えて、国には”入れ物”としての見方以外に目に見えない「経営」という切り口もあるのだから、建築至上で何でも片付けるといのは視野が狭く、粗雑に論じている感がある。
ただ、国土のグランドデザインというのは、やはり今後必要だ。それも近い将来に実現するような具体的な国土像が望まれている。
そうした中で、一線の識者が、国土のグランドデザインについて杖先を示したのは、よいことだと思う。今後も、国の要職にある人たちは、大きな、長い目で国の仕組みの方向性を指し示してほしい。
それが仕事だろ。