天平の甍
井上 靖 著/新潮社
『こういうときになって、以前にはあれほど軽蔑していた単なる写経というものを、いやそれこそが、守るべき全てだと心底感じるようになる』・・・ この心境、きっと誰も経験する。漠然と存在に期待していた大きな何かが、近づく段になって実は最初から目の端に止まっていたちっぽけな糸きれが全てだった、という状況。それでもその糸切れが全て、それを 守ることが今の自分の全意義だという思い。
対象ではなくてそう思える境地こそが 尊い何かなのかもしれない。
色々な本を読むのが好きなので、 じっくり読んだ書評を紹介しています。 購入前の参考にしていただければ幸いです。